街に会う懐かしきかな八重桜 瑚幸

初めての街降り行きて懐かしき
人とおぼしき八重桜かな

久しぶりに電車にゆられ、初めての街へゆきました。
都心の人であふれかえる駅での乗り換えが4つ、休日であるにもかかわらず混みあった電車からやっと降り立った都内のとある駅です。
見知らぬ街の見知らぬ道の雑踏を、地図をたよりに歩いていくと……ふと懐かしい人に出会ったような気がしました。
でもそれは、人ではありません。そこに立っていたのは、故郷の家にあった八重桜の樹でした。
ー あら、お久しぶり ー
とでもいうかのように、いま、満開の花をつけて。

初めて訪れた街で、ふと懐かしいなにかに出会ったことはありませんか?
それは人であるとは限りません。
そう、風景とか、
一本の木や小さな草花、動物や蝶などの虫、それから匂いなんかも……
八重桜の樹は、故郷の実家の庭にありました。南側の池の後ろにある築山の一角にあって、ソメイヨシノよりもほぼひと月遅れで、葉といっしょにもったりと重々しげに花をつけました。
陽気で明るく歌が好きな母は、ご近所の人気者でした。
そんな母は花が大好きで、春の梅に牡丹に沈丁花、ユキヤナギ、桜に梔子、そして薔薇、夏の藤、菖蒲に芍薬……と、そんな調子で、大きな花も小さな花も、華やかなのも楚々としたものも、花はみ~~んな好きっていう感じでしたから、実家の庭はどの季節も様々な花が咲いていたものでした。
そんな母をたとえてみれば、ちょうど八重桜のような人でした。
ぱあっと華やかでありながら芯が強く……そんな人でした。そうして、母がこの世を去ると、やっぱりこの八重桜も枯れてしまったのでした。

八重桜の花言葉は、「しとやか」「豊かな教養」だそうです。
いつもありがとうございます!
今回もまたまた、短歌が先で、俳句が後追いになります。この花言葉は、ちょっと母には当てはまらないような気がしないでもありませんが(笑)